コンピューターサイエンティストとPGAプロとして、私は皆さんが統計的な知識とTrackManのデータを掛け合わせた上で練習を決めているのかどうかが気になっています。皆さんは一般的に、ショットの距離と方向、どちらを練習するか決めますが、その決定に対して特に確信はないのではないかと思います。そこで今回は、練習方針のおすすめの決め方をお教えしようと思います。
一般的に、飛距離がある選手には有力な選手が多いです。ですから、あなたも飛距離の練習から始めると良いでしょう。適切なスピン量と打ち出し角で打ち出した際には、1 m/s スイングスピードが変動すると、キャリーがおよそ6.7ヤード変動します。このスイングスピードを調整することが重要です。
また、例えショットのコントロールを多少失ってでも、スイングスピードを向上させるようなトレーニングも必要です。というのも、多くの成長中のプレーヤーはスイングスピードを獲得したうえで、正確性を求めて練習してきているからです。
しかし、フェアウェイに乗る場合よりも池やブッシュに入る場合のほうが多いようでは、まともにラウンドすることができません。だからこそ、いつ飛距離の練習をして、いつ方向の練習をするのかが大きな問題となるのです。
以降の段落では、パラメータがどのように計算されているのかを詳しく説明します。もし詳細な統計にご興味がないようであれば、この段落は飛ばして直接「ショット分析」の項に移動してください。
計算と統計学的分析
トラックマンを使って、ショットの誤差合計(Side Total: ボールの止まった位置から、ティーとターゲットを結ぶ直線に垂直に下した線の長さ)と、飛距離(Total: 文字通りの飛距離)のデータを取ることで、ショットが何度右に行ったか左に行ったか、次の式から導出できます:
∝ = ?????? (誤差合計(Side Tot.) [ ??? または ?] / 飛距離(Total) [ ??? または ?])
Mark Broadieは彼の著書「Every shot counts」の中で、80~110くらいのスコアでコースを回るゴルファーたちと、PGAツアープロの選手たちのデータを取り、角度の偏差を導出しました。
結果は以下のようになりました。
- PGAツアープロの平均は3.4°
- PGAの中でも荒れたショットは3.7~4.4°
- スコアが90くらいのゴルファーは平均で6.5°
つまり理論的には、トラックマンで飛距離(Total)と誤差合計(Side Tot.)を測定することで、すべてのショットの誤差角度を測定することができます。よって、あなたの平均誤差角度があなたの属するゴルファーのグループに収まっているならば(低いならば)、あなたは飛距離の練習に入ったほうがよいでしょう。また、もし収まらないならば(高いならば)、正確性の練習をもう少し続けてみるとよいでしょう。
例えば、あなたはスコア90くらいのゴルファーだとしましょう。ドライバーの飛距離(Total)が200ヤード、誤差合計(Side Tot.)が18ヤードだとしたとき、誤差角度は5.16°となり、スコア90プレイヤーの平均である6.5°よりも低いことになります。つまり、あなたの正確性は十分すぎるので、飛距離を改善したほうがスコアに直結すると言えるでしょう。
より具体的に言うと、論文「 Assessing Golfer Performance Using Golfmetrics from Mark Broadie (page 4&5, Figure 2) 」は、私たちが以下の数式の数値を元に、自分のショットが平均よりも正確か否かを判断することができることを示しています。この数式は誤差角度の標準偏差を示したもので、d0.75は、あなたのいくつかのショットの中の、第三四分位数のことです。
?(?) = −0.0315?0.75 + 13.223
この結果の数値よりも自分の数値が高い選手はコントロールの練習を、低い選手は飛距離の練習をするとよいでしょう。当然ですが、飛距離(Total)や誤差合計(Side Tot.)はショットのたびに違うため、どのショットの数値で観測すればいいのか難しいですが、この論文はこれに関しても指示をしてくれています。それが、第三四分位数です。
例えば、5本打って飛距離がそれぞれ
・255y
・250y
・240y
・235y
・160y
だったとしたとき、小さいほうから数えた第三四分位数は250のショットになるので、このショットの飛距離を上式に代入したものと、この250のショットのデータを比較すればよいということになります。この等式は、ティーショットであればドライバーでも、ウッドでも、アイアンでも利用できます。
予測スコア向上
より飛距離があってかつ正確なドライバーが打てるようになった時、つまりは向上後のスコアが想像できるでしょうか? Broadie は彼の論文の中で、次の数値を満たすことでスコアが下記のように改善されることが期待できると述べています。
レベル | スコア | 飛距離 | 誤差角度標準偏差 |
Pro | 64-79 | 272m / 297yds | 4.0° |
Am1 | 70-83 | 227m / 248yds | 5.4° |
Am2 | 84-97 | 217m / 237yds | 6.4° |
Am3 | 97-120 | 198m / 216yds | 8.1° |
このことに加えて、Broadieは彼の本で、プレーヤーのドライバーの飛距離が上がった場合又は誤差角度が小さくなった場合に、どれくらいスコアが良くなるのかを予測しています。この表を見ると、やはり飛距離が伸びるほうがスコアが良くなりやすく、特にこの傾向はプロに顕著に表れています。スコア115程度のプレイヤーは、ドライバーの飛距離を20ヤード伸ばすことでスコアが2.7伸びるというデータが出ています。しかしこれは必ずしも飛距離が角度以上に重要であるということではありません。
PGA Tour | 80 golfer | 90 golfer | 100 golfer | 115 golfer | |
ストローク / 20 yds (18m) | 0.8 | 1.3 | 1.6 | 2.3 | 2.7 |
ストローク / 1° (誤差角度) | 0.8 | 0.9 | 0.9 | 1.0 | 1.1 |
では、以下の図のような状況を考えてみましょう。あなたは240ヤードのティーショットを、誤差角度の偏差6°で打つことができるとします(この数値は、統計に基づいた一般的な数値です)。誤差角度の偏差が6°の時、誤差合計(Side Tot.)はターゲット方向の両側各23ヤード、合計46ヤードほどになります。以下の図では、あなたのショットであればフェアウェイにぎりぎり収まることになります。よって、これよりも方向が厳密に定まれば、あなたは飛距離に重点をおいて練習ができることになり、逆にこれよりも正確性を欠く場合には、より正確なショットを目標としたほうが良いでしょう。
おそらく、ポジションに入ってショットの数値計算をすることには抵抗感があるでしょう。ショットにおける誤差角度の導出手順をより簡単なものにするために、私は皆さんが「飛距離(Total)」と「誤差合計(Side Tot.)」のデータを持っているときに角度がわかるような上記の表図を作成してきました。次の章の「ショット分析」では、すべてのステップを統計学的なバックグラウンドから説明しています。
ショット分析
以下の手法を使えば、ドライバーでもアイアンでもウッドでも、どんなティーショットも分析することができます。この際、ターゲットは確実にフェアウェイ上にしておく必要があります。
Step 1:
ドライバーで5回ショットを打ちます。この際、トラックマンで「飛距離(Total)」と「誤差合計(Side Tot.)」を測定します。飛距離と誤差合計とは
表や図はすべて、メートル表示でもヤード表示でも構いませんので、慣れているほうを使いましょう。しかし、最初から最後まで1つの単位に統一することを忘れないでください。
Step 2:
2番目に飛距離が大きかったショットのデータに注目してください。例えばあなたの5回のショットが、飛距離が大きいほうから237m,235m,233m,227m,220mだったとします。この時は、2番目に大きいショットである235mのショットのデータに注目します。これはこの際の参考データです。
このデータを見ると、飛距離(Total)が234.9mに対して、誤差合計(Side Tot.)は12.0メートル右となっています。このデータを用いて、以下の表を基に誤差角度を計算します。
飛距離 (m) | 3° | 4° | 5° | 6° | 7° | 8° |
146 | 8 | 10 | 13 | 15 | 18 | 20 |
164 | 9 | 11 | 14 | 17 | 20 | 23 |
182 | 10 | 13 | 16 | 19 | 22 | 25 |
201 | 11 | 14 | 18 | 21 | 24 | 28 |
219 | 11 | 15 | 19 | 23 | 27 | 30 |
237 | 12 | 17 | 21 | 25 | 29 | 33 |
256 | 13 | 18 | 22 | 27 | 31 | 36 |
274 | 14 | 19 | 24 | 29 | 33 | 38 |
293 | 15 | 20 | 26 | 31 | 36 | 41 |
飛距離 (yds) | 3° | 4° | 5° | 6° | 7° | 8° |
160 | 8 | 11 | 14 | 17 | 19 | 22 |
180 | 9 | 13 | 16 | 19 | 22 | 25 |
200 | 10 | 14 | 17 | 21 | 24 | 28 |
220 | 12 | 15 | 19 | 23 | 27 | 31 |
240 | 13 | 17 | 21 | 25 | 29 | 33 |
260 | 14 | 18 | 23 | 27 | 32 | 36 |
280 | 15 | 20 | 24 | 29 | 34 | 39 |
300 | 16 | 21 | 26 | 31 | 37 | 42 |
320 | 17 | 22 | 28 | 33 | 39 | 45 |
Step 3:
この後は、下記のグラフを元にどのように練習していくべきかを判断します。
あなたのショットの位置をこのグラフにポイントしてください。
- もしあなたの点がアマチュアライン(上記の直線)よりも上であれば、あなたは方向の正確性を課題としたほうが良いでしょう。
- もしあなたの点がアマチュアラインよりも下であれば、正確性は十分なので飛距離を伸ばす練習に取り組んだほうが良いでしょう。
前述の例では、誤差角度が3°、飛距離が235メートルであることから、直線よりも下にプロットされるため、あなたは飛距離を伸ばす練習に取り組んだほうが良いことになります。
もしあなたのプロットした点がこの直線に非常に近い場合には、基本的に飛距離の増大に取り組んだほうが良いでしょう。なぜなら、飛距離のほうが方向性よりもスコアへの貢献度が大きく重大であり、かつ正確性の練習は後からいつでもできるからです。
この測定プロセスは、より正確なデータを得るために3~4回行ったほうが良いでしょう。つまり、およそ15~20回のティーショットが必要です。
何度もこの計測を行うことで、日に日に変わるプレーヤーのパフォーマンスの変動も捉えることができます。もし選手がずっと直線に対して同じ位置にいたら、この指示に従って練習をしたほうが良いことは明確になるでしょう。
あなたのトレーニングを始めましょう
もしあなたが飛距離向上のトレーニングをすると決めたら、最も良い最初のトレーニングはヘッドスピードの向上でしょう。可能な限りヘッドスピードが高まったら、打ち出し角やスピン量の向上に移りましょう。これらの数値は入射角と体の動きに非常に大きく影響されるため、入射角と安定した体の動きを手に入れられるように練習することをおすすめします。これらすべての数値が改善されたら、すぐにインパクトの瞬間の最適化に取り組みましょう。安定した体の動きができていれば、簡単にできるはずです。
もしあなたがショットの方向を正確にするトレーニングから始めるのであれば、最も良い最初のトレーニングは、フェイスコントロールとクラブパス(Club Path)をコントロールすることでしょう。なぜなら、これが “サイドスピン”(Spin Axis)の向上につながるものであり、かつ偏差の重要な要素であるからです。私の考えでは、フェイスコントロールはグリップに大きく影響されるため、最初に修正するべき要素だと思います。グリップが改善されたら、次はクラブパス(Club Path)改善のための安定した動きを見つける必要があります。フェイスコントロールとクラブパス(Club Path)が良くなったら、次はフェイスの中心で打つことを意識しましょう。ギア効果も、偏差への影響が大きいからです。フェイスの中心で打つことは、安定したボディコントロールがあれば、より簡単になるでしょう。
By TrackMan Master – Chris Reymann – PGA Professional, Germany
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